研究概要 |
今年度は皮質集合管でのK分泌機序を明らかにするため、K分泌を司る集合管細胞(CD cell)に焦点をあて、血管側K濃度を2.5から8.5mMに急速に上げたときの基底側膜、管腔側膜のイオン輸送体の反応を検討した。結果は以下の通りである。 1、血管側のK濃度を2.5から8.5mMに急速に上げたとき、経上皮電位、基底側膜電位、管腔側膜電位、は全て二相性の変化、すなわち一過性の過分極(過分極相)、その後のゆっくりとした脱分極(脱分極相)、を認めた。過分極相では経上皮コンダクタンス(Gt)、分画管腔側膜抵抗(fRa)ともに変化しなかったが、脱分極相ではGtの増加とfRaの低下を認めた。 2、管腔側膜のNaチャネルをアミロライドで抑制した後、血管側のK濃度を2.5から8.5mMに急速に上げると、過分極相は完全に、また脱分極相は部分的に抑制された。 3、管腔側膜のKチャネルをBaで抑制した後、血管側のK濃度を2.5から8.5mMに急速に上げると、過分極相、脱過分極相ともに部分的に抑制された。 4、基底側膜のNaポンプをstrophanthidinで抑制した後、血管側のK濃度を2.5から8.5mMに急速に上げると、過分極相、脱分極相ともに完全に抑制された。 5、基底側膜のKチャネルをBaで抑制した後、血管側のK濃度を2.5から8.5mMに急速に上げると、過分極相、脱分極相ともに影響されなかった。 以上より、生理的範囲で血管側K濃度が上昇すると,CDcellでは血管側膜Naポンプ活性の増加とそれに引き続く管腔側膜Naチャネル活性、Kチャネル活性の増加が起り、K分泌が刺激されることが明らかになった。今後はミネラルコルチコイドを投与したウサギで同様の実験を行ない、対照群と比較すると共に、血管側膜、管腔側膜のイオン輸送体を共通に動かす細胞内mediatorを検索する予定である。
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