研究概要 |
本年はSV40大型T抗原遺伝子導入transgenic mice由来近位直尿細管(S_3)細胞でのシスプラチン(CDDP)によるアポトーシスにおけるInterleukin-1β-converting enzyme (ICE) protease familyの役割について検討した。まずICE protease familyのペプチド阻害剤のCDDPによる細胞障害に対する影響を指標として,関与するICE proteaseの同定を試みた。用いた阻害剤はICE阻害作用のみを示すAc-Tyr-Val-Ala-Asp-H,ICEおよびICE-like proteaseの両者の阻害作用をもつZ-Asp-CH_2-DCBさらにはICE-like proteaseの一つであるCPP32の阻害剤 Ac-Asp-Glu-Val-Asp-Hである。いずれの阻害剤によってもCDDPによる細胞障害は抑制され,CDDPによるS_3細胞でのアポトーシスにICEおよびCPP32を含むICE-like proteaseが関与することが示唆された。またICE protease familyを幅広く阻害する蛋白質CrmAの遺伝子導入によってもCDDPによる細胞障害は抑制された。次にICEおよびCPP32の蛍光基質であるAc-Tyr-Val-Ala-Asp-MCAおよびAc-Asp-Glu-Val-Asp-MCAを用いて,CDDP処理S_3細胞でのICEおよびCPP32酵素活性を測定した。その結果CDDPによりCPP32活性の亢進は認められたがICE活性には変化は認められなかった。CDDPによるCPP32活性の亢進はZ-Asp-CH_2-DCBおよびAc-Asp-Glu-Val-Asp-Hによって抑制されたが,Ac-Tyr-Val-Ala-Asp-Hによっては影響されなかった。結論としてCDDPによるS_3細胞でのアポトーシスの実行はCPP32の活性化によることが明らかとなった。
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