研究概要 |
SV40大型T抗原遺伝子導入トランスジェニックマウス由来近位直尿細管終末部(S_3)細胞におけるシスプラチン(CDDP)誘導アポトーシス(AP)誘導の細胞内機構を解明すべく以下の検討を行った。(1)S_3細胞でのCDDP誘導APにはRNA合成,蛋白合成,endonuclease活性化及びc-fosmRNA発現が関与することを阻害剤およびRT-PCR法を用いて明らかにした。そしてc-fosmRNA発現はendonucleaseの上流に位置していた。(2)S_3細胞の対照として用いた髄質外層集合尿細管細胞においては,形態学的にはAP特有の変化が認められたが,APの生化学的特徴であるDNA断片化は検出されなかった。(3)初年度の検討でCDDPによるAP誘導に重要な役割を果たすことが明らかにされたcaspasc-3 mRNA発現の腎内分布を同定した。方法としてはマイクロダイセクション法で採取したネフロンセグメントのmRNAをRT-PCR法を用いて増幅して解析した。その結果 caspase-3mRNA発現は検討した糸球体から集合尿細管に至る全てのセグメントに認められ,中でも遠位尿細管,皮質および髄質集合尿細管で発現レベルが高かった。(4)CDDP処理S_3細胞において蛍光プローブと共焦点顕微鏡を用いてH_2O_2の発生を検出した。そしてcatalaseにより細胞死およびH_2O_2の発生が共に抑制されたことから,H_2O_2の細胞死への関与が示唆された。(5)H_2O_2をS_3細胞に添加するとAPのみならずその細胞死形態としてoncosis,apoptotic oncosis,necrosisも認められた。H_2O_2処理S_3細胞においてDNA断片化も認められ,DNA断片化はAPに特有ではないと考えられた。
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