エンドセリンの腎尿細管作用は、Na再吸収の抑制などが提唱されているが不明な点が多い。機能に及ぼす影響よりは、種々のサイトカインを分泌させ尿細管間質障害あるいは線維化に関与する可能性が指摘されてきた。われわれはこれまで腎尿細管由来のMDCK細胞、LLC-PK1細胞を用い、エンドセリン-1のmRNA発現、それに影響を及ぼすTGF-βの効果について調べた。すると、TGF-βは用量依存性にエンドセリン-1のmRNA発現を増加させ、これはプロテインキナーゼCを介することが判明した。一方のTGF-βもMDCK細胞において遺伝子発現があるが、これはTGF-βによって自己誘導されていることがわかった。すなわち、エンドセリン-1もTGF-βも一旦誘導されればpositive feedbackされることになる。 次にin vivoの実験として急性腎不全モデルを作製した。臨床的にエンドセリンの関与が注目されている急性腎不全のモデルとして、虚血-再潅流モデルを用い、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)・エンドセリン発現の関連において検討した。そのためまずラットの虚血-再潅流モデルを用いて基礎的検討を行った。腎糸球体・尿細管の内因性SODは虚血-再潅流2時間後に著しく減少していることが共焦点レーザー顕微鏡にて観察された。そこで外因的にSODを投与してみることにした。しかしながらSODの血中半減期は極めて短く、大量注射しないと効果は期待しづらい。そこでSODをレシチン化することによって細胞への吸着性を高め効果が少ない量でかつ持続するように工夫した。24時間後の血清はCrは前値の3倍に上昇し、Shamラットでは変化なかった。このモデルを用い、レシチン化SODを静注した場合、血清Crの上昇は用量依存性に抑制された。レシチン化しないSODを使用した場合に比較し、1桁以上効果が増大した。さらにレシチン化SODを静注するタイミングを検討したところ、虚血1時間前、虚血直前、再潅流直前、再潅流1時間後の4点では有意な差はなく、再潅流後に静注しても効果が見られたことはきわめて興味深い。しかしながら、ラットでみられるような虚血-再潅流モデルは安定したものが作成されないため、それ以上の追求は不可能であった。
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