研究概要 |
ヒトの多嚢胞性腎疾患の病因遺伝子を同定し、その発症機構を解明することを目的として、HLA領域のセントロメア側に相当する遺伝子領域について、我々が分離したマウスの多嚢胞性腎疾患の発症に関与する病因候補遺伝子であるアルコール脱水素酵素関連遺伝子(Ke6)のヒト相同遺伝子であるHKE6を中心に新遺伝子の探索と変異の解析を行った。HKE6遺伝子を含むHLA-DP抗原亜領域のセントロメア側250kbのYACとコスミド及びcDNAクローンの構造解析によって分離した8個の新遺伝子のなかで、HKE6遺伝子は、HLA-DP遺伝子より100kbセントロメア側に位置し、8エキソンから構成され、2.2kbの領域を占める遺伝子であることが明らかになった。また、HKE6遺伝子とその周辺領域43kbの塩基配列解析を中心とした構造解析から、この領域には、RING1,HKE6,HKE4の3遺伝子以外にGrailなどの解析から予測される発現遺伝子は存在しないことが推定され、この領域に多嚢胞性腎疾患の新たな病因候補遺伝子は見いだされなかった。多嚢胞性腎疾患患者の腎RNAを用いたノザンハイブリダイゼーションの解析から、HKE6遺伝子の発現が、正常腎に比較してやや弱い傾向にあったが、RT-PCRでは、両者に顕著な差は認められなかった。これらの患者DNAでは、HKE6 cDNAクローンをプローブとしたジェノミックサザンハイブリダイゼーションを行った結果、ジェノミックサザンハイブリダイゼーションによって検出されるHKE6遺伝子とその周辺領域の転座や欠失は認められなかった。さらに、多嚢胞性腎疾患患者の腎DNA(4例)についてHKE6遺伝子の5'上流領域640bpとエキソン1からエキソン4までの核エキソンのPCR産物の塩基配列を健常人のそれと比較したところ、患者DNAに塩基の置換や挿入、欠失などの異変は認められず、多嚢胞性腎疾患の発症におけるHKE6遺伝子の関与の可能性は見いだされなかった。
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