今年度は、ラット培養メサンギウム細胞を用いて、TGF-βの作用に関する基礎検討を行った.まず、1〜10pMの低濃度と500pM〜1nMという高濃度のTGF-βによるメサンギウム細胞の増殖能およびフィブロネクチン(FN)産生能への影響を検討した。低濃度のTGF-βでは、メサンギウム細胞への[3H]thymidineの取り込みは促進し、高濃度では逆に抑制された。しかし、いずれの濃度でもFN産生は増加した。次いで、この反応にG蛋白が介在しているかを検討するため、pertussis toxin(PTX)の影響を検討した。100ng/ml PTXで5時間処理後に、100pX〜1nMTGF-βを作用させると、[3H]thymidineの取り込みおよびFN産生は低下した。よって、ラット培養メサンギウム細胞にはPTX感受性のG蛋白が存在し、TGF-βによる増殖およびFN産生の変化に関与している可能性をつきとめた。さらに、メサンギウム細胞の蛋白抽出液を用いたWestern blotでは、Gi蛋白が主要なG蛋白であった。今後は、培養メサンギウム細胞に対するTGF-βの作用にGi蛋白が関与しているかどうか検討を進める予定である。
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