研究概要 |
近年,非酵素的糖化タンパク(advanced glycated endproducts;AGEs)の蓄積が糖尿病の種々の合併症を引き起こしている可能性が指摘されている.我々は糖尿病性腎症における細胞外マトリックス(ECM)増加による糸球体硬化症とAGE蓄積との関連を検討するためにIV型コラーゲンをグルコースによりin vitroで非酵素的に糖化し,この糖化IV型コラーゲンば培養腎メサンギウム細胞(MCs)機能におよぼす影響を検討してきた.その結果,糖化IV型コラーゲン(IVc)によりMCsにおけるECM成分の蛋白レベルでの産生とmRNAレベルが増加すること,ルシフェラーゼレポーターを用いたトランジエントトランスフェクションアッセイでは,糖化IVcによりI型コラーゲンは,転写レベルで変化が起こり産生が増加することを明らかにした.また,MCsでは糖化IVcによりECM成分のmRNA増加に先立って,TGF-β1mRNAの増加のみられること,そして糖化IVcによるI型コラーゲンmRNAの増加は,抗TGF-β1中和抗体により抑制されることが明らかとなった.また,MCs細胞の培養上清中でのTGF-β活性の測定により,糖化IVcを加えた場合に同活性の増加を認めている.以上より,糖化IVcのMCsに対するECM成分産生増大作用は,TGF-βを介することが考えられた.現在,糖化IVcがTGF-β1mRNAを転写レベルで増加させるか,またその細胞内情報伝達系を明らかにするために,種々の長さのTGF-βプロモタ-にレポータージーンとしてルシフェラーゼを結合させたプラスミドを使用したトランジエントトランスフェクションアッセイ,プテインキナーゼCやチロシンキナーゼのインヒビターおよびカルシウム拮抗剤などのTGF-β1mRNA発現におよぼす影響,そして糖化IVcによる情報伝達系蛋白のチロシンリン酸化の変化をウエスタンブロットにより検討している.
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