研究課題/領域番号 |
08671313
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
大川原 明子 国立感染症研究所, 生物活性物質部, 研究員 (30260277)
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研究分担者 |
有村 義宏 杏林大学, 医学部, 講師 (40222765)
山河 芳夫 国立感染症研究所, 細胞化学部, 室長 (50100102)
鈴木 和男 国立感染症研究所, 生物活性物質部, 室長 (20192130)
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キーワード | ANCA / 自己免疫疾患 / MPO / アセアノスタチン |
研究概要 |
1.研究目的 好中球ライソゾーム酵素のひとつであるミエロバーオキシデース(MPO)のin vitroでの細胞外への放出阻害を指標として、われわれは、アセアノスタチン(i-14:0)を見いだした。好中球過剰反応の指標である血中MPO-ANCAが高値を示した関節炎ラットモデルにアセアノスタチンを投与し、病態の軽減と血中MPO活性およびMPO-ANCA値の正常化について、アセアノスタチンの生体での効果を調べ、医療応用をめざすことを目的とした。 2.研究方法 Lewis系ラット(8W、♀、一群6匹)の一側の足にアジュバントを投与し、アセアノスタチンをアジュバント投与から18日後まで、腹腔内投与(30mg/kg)した。コントロール群では、0.5%メチルセルロースを同様に連日腹腔内投与した。次の10項目について、アセアノスタチンの効果を評価した。 A 体重の経時変化 F 尿中グルコサミノグリカン(GAG)量 B 後肢足臆浮腫の経時変化 G 血清中NOx濃度 C 臓器重量(牌臓・胸腺) H 血清中ムコたんぱく濃度 D 末梢血中の白血球数の変化 I 血清中MPO-ANCA値 E 尿中ハイドロキシプロリン(OH-PRO)量 J 血清中MPO活性 3.研究成果 関節炎発症ラットでは、好中球活性化の指標である血清中MPO-ANCAが高値を示したが、アセアノスタチンの腹腔内投与により正常レベルに減少した。一方、血清中MPO活性は、正常ラット、関節炎発症ラットで有意な差を認めなかった。また、関節炎発症ラットでは、体重増加の抑制、白血球数の増加、足浮腫、脾臓肥大、胸腺萎縮、骨、軟骨破壊、血清中NOx、ムコタンパクの増加等明らかな炎症像が観察された。アセアノスタチン投与群では、体重増加の抑制の改善、白血球増加の抑制、足浮腫の抑制、骨破壊の抑制が認められたが、溶媒投与群でも同様の菜理作用がみられた。腹腔内投与という処置により腹腔で炎症がおこり、その影響で抗炎症作用が示された可能性が考えられる。脾臓肥大、胸腺萎縮、血清中の炎症マーカーであるNOxが関節炎発症群よりも増加しているのもその根拠になっていると思われる。 4.考察 アセアノスタチンの腹控内投与によって、MPO-ANCA値を指標とした好中球の活性化が抑制されることが示されたことから、アセアノスタチンによる関節炎の発症、病態の何らかのリスク軽減の可能性が示唆されたが、関節炎の症状の緩和、進行の抑制までには至らなかった。関節炎の発症あるいは病態にMPO-ANCAがどのように関わっているのか、さらに検討する必要がある。
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