研究課題
基盤研究(C)
胎動は胎児の健康状態を示す指標として臨床的に広く用いられており、動物実験でも低酸素症により減少することが報告されている。しかしながら、胎動が低酸素症により抑制されるメカニズムについては未だ明らかにされていない。成人では低酸素による末梢化学受容体からの求心性インパルスは呼吸運動を刺激するが、胎児ではその求心性インパルスが脳幹レベルで抑制されることが知られている。胎児の運動に関しても、脊髄レベルで求心性刺激に対する抑制性の機序が働いている可能性がある。脊髄後索電位は末梢神経の刺激により誘発され、脊髄後角に存在する介在ニュウロンの興奮を反映する陰性および陽性波からなる電位であり、従来脊髄レベルでの抑制メカニズムを解明するために用いられてきた。我々はウサギ新生仔を用いて後索電位を記録し、低酸素刺激が脊髄機能に及ぼす影響を検討するとともに、脊髄を切断し上部中枢神経系からの下行性の調節メカニズムについても検討した。ハセロン麻酔下で椎弓を切除した後に電極を脊髄表面に留置し、坐骨神経に刺激を加え、後策電位を記録した。脊髄未切断ウサギにおいては、低酸素により陰性波の遅延時間は延長したが、陰性波の振幅、陽性波の遅延時間・振幅は変化しなかった。脊髄切断ウサギでは、低酸素による陰性波の遅延時間に対する影響は認められなかったが、陰性波の振幅は減少する傾向が認められた。また、陽性波は遅延時間、振幅ともに低酸素負荷により減少した。ウサギ新生仔においては、陰性波、陽性波ともにその振幅は脊髄未切断では変化せず、脊髄切断により減少することから、上部中枢神経系からの下行性信号が脊髄機能を代償性に維持している可能性が示された。