研究概要 |
【目的】乳癌の進展を新しい画像処理によって明らかにすることを目的に、画像診断の新しいmodalityである3次元MRI)が乳癌親展巣を描出する能力を,切除標本の全割病理所見と対比することによって評価した. 【対象と方法】乳癌と診断された20症例に対し術前にMRIを施行し,MRI上で腫瘍の性状と広がりを3次元的に把握した.根治手術後に摘出乳房を5mm幅で全割して病理検索し,MRI所見と対比させた. 【結果】20例中18例でMRI上癌巣を描出できた(感度90%).(a)18例中9例は限局型で,それらは病理検索でも腫瘍は限局しており,乳管内進展も全て2cm以下であった.(b)残りの9例は非限局型で,うち4例はあたかも乳腺の区域に沿うようにびまん性に造影されるもので,病理検索で広範囲に進展する乳管内癌であることが確認された.3例は腫瘤が細長く伸びる,すなわち娘結節と連なったように造影されるもので,病理マップで湿潤癌の進展であることが確認された.この3例中2例では,術前のマンモ,超音波画像(US)で腫瘍の進展範囲が実際の半分程度に過少評価されていたが,MRIではより正確に造影描出されていた. 【考察】MRIは浸潤癌や広範囲の乳管内癌を感度良く,マンモなどより正確に描出できる傾向にあった.したがって、3次元MRIは乳房温存療法の適応決定に重要と考える.今後、顕微鏡レベルの組織像との対応を解析し、MRIによる画像診断で乳癌の進展の判定がどこまで可能か、良・悪性の鑑別診断が可能か、について更に検討を要する。 【研究成果の発表】 Ohuchi N, et al. Five-year resuts of breast conserving surgery without radiation for primary breast cancer in Japan. Breast Cancer Res Treat, 41 (3) : 233, 1996. Ohuchi N, et al. Management of minimal breast cancer. Proceedings of the 21St Meeting of the International Associa for Breast Cancer Research, July 3-5, 1996, Paris, France 大内憲明、他:Tis乳癌に対する乳房温存療法:成績評価とその適応。第96回日本外科学会(千葉)、1996年4月 石田孝宣、大内憲明、他:乳房温存手術の適正な切除範囲の検討:浸潤巣からの乳管内病巣の拡がりを中心に。第4回日本乳癌学会総会(東京)、1996年6月
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