研究概要 |
1.体重25kg前後のブタを用いて同所性肝移植実験を用った。まず、心停止後ドナー(NHBD)における肝温虚血の時間的許容限界を明らかにするため、ドナーをKCl静注による心停止後0分(n=3)、30分(n=3)、60分(n=5)、90分(n=4)放置して肝に温虚血を加え、その後肝潅流、冷却保存(4時間)を行い、レシピエントに移植した。(1)術後生存は、0、30、60分群の全例が4日以上生存したが、90分群では全例が12時間以内に死亡した。(2)血清GOT,LDHは温虚血時間の長さに応じて上昇したが、60分以内の群と90分群の間に有意の差が見られた。(3)再潅流後1時間では、肝エネルギーチャージ(EC)は0、30、60分群において前値まで速やかに回復したのに対し、90分群では有意に回復が遅れた。(4)以上より、今回の実験モデルでは、NHBDにおける肝温虚血の許容限界は60分と考えられた。 2.次に上記実験における温虚血90分の場合に、FK506と血小板活性化因子(PAF)拮抗剤E5880を投与し、その効果を検討した(n=6)。(1)術後全例が2日以上生存し、生存率は有意に延長した。(2)再潅流後早期の血清GOTおよび乳酸値は90分非治療群に比べて有意に低く抑えられた。(3)再潅流後1時間のECは90分非治療群に比べて有意に高く回復した。(4)以上より、FK506と、PAF拮抗剤E5880の投与が、NHBDにおけるグラフト肝バイアビリティーを改善する可能性が示唆された。
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