研究概要 |
生体部分小腸移植の研究というテーマで研究をさせてもらっている.しかし,小腸部分移植の前に,小腸移植後腸管のviabilityを評価する方法が未だ確立されていないため,最初に小腸の虚血再潅流障害モデルを作製し,腸管粘膜のpH(pHi)が移植後腸管のviabilityを評価する方法として有用かどうかを犬で検討した.実験には体重12-20Kgの雑種成犬23匹を用いた.動脈血pH測定のための頸動脈カテーテルを留置し,回腸切断端より20cmの腸管内に,pHiを測定するためのtonometerを挿入留置して上腸間膜動脈(SMA),上腸間膜静脈(SMV)を周囲のリンパ節,神経を郭清後血流を遮断したwarm ischemiaモデルで行った.虚血前,再潅流直前,再潅流1,6,12,24時間後にpHiを測定し,同時に回腸組織を採取し,病理組織学的にも検討した.その結果,腸管粘膜のpHiの低下は,病理組織的障害の程度とよく相関することが判明し,小腸移植後のグラフトのviabilityを評価する方法として,tonometerを用いたpHiの測定が有効であることが判明し,現在実際に我々の実験に利用している.その後,通常の小腸移植(全小腸移植)をautotransplantationで10頭行い,血管吻合や腸管吻合等が技術的に小腸移植を行うことに問題がないことを確認し,術後管理にも問題がないことを確認した.そして現在,回腸側,及び空腸側の小腸部分移植を行い,研究をすすめているが,まだ匹数が少なく,データをだすにいたっていない.しかし,テクニカルには問題がないことは確認されており,今後実験をすすめ発展させていく所存である.
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