研究概要 |
小腸は阻血に対し敏感であるため、小腸の再生と保存技術は小腸移植を成功させるための重要な要素となる。小腸移植を行うにあたって、まず再灌流障害の簡便な評価方法を探った。イヌの温阻血モデルを用いて、腸管粘膜pH(pHi)測定の有用性を病理組織学的障害と比較検討した。その結果、組織学的障害程度の少ないものはpHi値が前値に近く、障害が強くなるほどpHi値が前値より下がることが判明し、pHiは安全で、安価な虚血再灌流障害を評価する方法であるとの結論を得た。次いで、再灌流障害のメカニズムとして、細胞内での種々の活性酸素や、nitric oxideの生成、さらにはfree radicalによる血管内皮の障害等が考えられているが、我々は炎症性サイトカインであるTNF-α,IL-1に着目し、虚血再灌流障害を軽減するためにTNF-α,IL-1の産生阻害剤であるFR167653の有用性を検討した。そして、FR167653が小腸の虚血再灌流障害を軽減するのに有用であることを発表してきた。次いで、生体部分小腸移植を行うにあたって、空腸側と回腸側といずれが虚血再灌流障害に対して強いかを調べた。その結果、空腸側の方が再灌流障害に対して回腸側より強く、虚血再灌流障害後の再生も早いことが判明した。現在、実際に部分小腸移植を行い、どの部分をどの程度の長さを移植したらよいかを栄養評価の面から検討を行っている。これらの実験を基に、適切な生体部分小腸移植を行うための研究をひき続き行いたい。
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