我々は平成4年度より胃癌とEpstein-Barr virus (EBV)との関連性を研究しているが、今年度新たに得られた研究成果は下記に示すごとくである。 1.EBV関連胃癌症例の臨床的特徴:EBV関連胃癌は全胃癌の4.9%を占め、男性優位で噴門部から胃体部局在し、限局隆起型が多い。我々の検索したEBV関連胃癌22例では肝転移、腹膜播腫はみられず特徴的であった。 2.表現形質の解析:EBV関連胃癌では細胞接着因子であるLFA-1、ICUM-1やHLAクラスII抗原の発現が増強している傾向がみられたが、逆に減弱している症例もみられ一定していなかった。 3.抗EBV抗体価:EBV関連胃癌患者では血清中の抗viral capsid antigen (VCA)-IgG、抗early antigen (EA)-IgG、EBNA抗体価が上昇している傾向がみられ、腫瘍マーカーとして有用と思われた。 4.浸潤リンパ球の検索:EBV関連胃癌では一般的にリンパ球浸潤が豊富であるが、その主体はTリンパ球でありCD4陽性リンパ球がCD8陽性リンパ球より優位であった。T細胞受容体の解析は症例が少なく不十分であった。 5.HLAタイピング:EBV関連胃癌患者に対しHLAタイピングを行っているが、症例数が少なく解析は困難である。今後も症例を重ねていく予定である。 6.EBV lytic cycleの検索:我々の検索ではEBVvirusの産生を示す所見は得られなかった。 7.アポトーシスとの関連:EBV関連胃癌でアポトーシスを抑制するbcl-2の発現を示す症例がみられた。 以上が今年度の成果であるが、今後も研究を継続していく方針である。
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