研究概要 |
ラ島移植後の拒絶反応の抑制を目的として,1.胸腺内移植法の有効性,2.ラ島への遺伝子導入の効率,3.Major histocompatibility complexの適合の異義につき,基礎的研究を行った。1.ラット胸腺内に同種移植されたラ島は,胸腺外(腎皮膜下)の同種移植に比較し,長期の生着(100日以上)が得られ,免疫隔離部位としての胸腺の有効性が確認された.またドナー特異的に免疫寛容を誘導し得ることをin vitroの実験系(Mixedlymphocyte reaction:MLR)で確認した。2.ラット膵よりラ島を分離し,リポソーム法を用いて遺伝子導入の基礎的研究を行った。pZeoSV2/lacZ Vectorを導入し,X-gal染色にて導入効率を評価した。導入効率は90%以上を示し.かつstatic incubation assayではラ島のviabilityは良好に保たれ,リポソーム法にてラ島への効率的,非侵襲的な遺伝子導入の可能性が確認された。3.MHC(SLA)の固定されたNIHミニブタの系を使用し,MHC適合の組み合わせで,非免疫抑制下でのラ島同種移植を行った。非免疫抑制下で2週間以上のラ島の生着を血糖値,糖負荷試験にて確認した。ラ島移植におけるMHCの適合の重要性を示唆した。以上の研究成果より,他のラ島移植において種々の方法での免疫抑制法の開発が可能であり,持続的免疫抑制剤の投与なしでのラ島移植の可能性が示された。本研究成果はラ島移植のみならず,広く臓器移植の臨床への応用も期待される。
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