1.犬大腿動静脈間のループグラフト作成 生後6-12カ月のビ-グル成犬を用いて以下の実験を行った。 (1)Expanded polytetrafluoroethyrene(E-PTFE)グラフトを大腿動脈と端側吻合し、ループ状に皮下トンネルを通して大腿静脈付近に出し、グラフトと大腿静脈を端側吻合した。E-PTFEグラフトのサイズは、5mmのストレートを用いた。 (2)移植したグラフトは24時間以内に前例閉塞した(n=5)。これは、ループの部分のグラフトが急角度すぎるため、折れ曲がって閉塞するのが原因であった。 (3)これを解消するために、ループ部分にリングのついたグラフトを用いた。移植したグラフトは7日以内に前例閉塞した(n=5)。これは、犬のHtがヒトに比べて約1.5倍高く血液が粘稠なため、グラフトの直径が細すぎたためであると考えられた。 (4)これを解消するために、6mmのリング付きグラフトを移植した。移植したグラフトは30日以上開存したが、steal syndromeのため、下肢の血流障害が生じ、潰瘍などを形成し、感染を合併して全例死亡した(n=4)。 2.自己血管間置の実験について (1)大腿静脈とグラフトのあいだに自己血管を間置する実験のためには、少なくとも6カ月以上のグラフト開存が必要である。今回の実験では、最長2カ月の開存が得られたが、組織学的にみると、偽粘膜の形成による静脈-グラフト間の挟窄は軽微で、コントロールとしての役割を果たしていない。 今後は、steal syndromeを防止するためにtapered graftの使用を考えなければならない。
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