研究課題
基盤研究(C)
外科侵襲時において、宿主の免疫能賦活は重要な課題である。そこで本研究は、外科侵襲時の宿主免疫能改善方法の確立に向けて、免疫担当細胞のInsulin-like growth factor I(IGF-I)autocrine、p-aracrineと侵襲の程度、免疫能との関連を明らかにすることを目的とした。免疫担当細胞の内因性IGF-I産生の検出においては顕著な成果が得られなかったが、IGF-I及びIGF-Iを主要なメディエータとする成長ホルモン(GH)と宿主免疫との関連、及びその増強対策について以下の研究成果を得た。1、GH・IGF-I前投与腹膜炎マウスで、細菌クリアランスや腹腔内浸出好中球(PEN)のopsonin receptor(CD11b)発現をみた。その結果、GHはPENのCD11b発現を増強し、細菌クリアランスを高めた。2、手術患者周術期で血中GH・IGF-I濃度を測定した。術前のIGF-I濃度が低い症例で感染性合併症が発生し易かった。また術後に感染性合併症の発生率が高い食堂癌手術や肝硬変合併肝切除術では、術後のIGF-I濃度が低かった。3、GHのin vitroでの好中球細胞死に及ぼす効果を検討し、GHの好中球apoptosis抑制効果が確認された。4、GH・IGF-Iによる外科患者周術期単球機能のmodulat-ionを試みた。その結果、GHは術後単球のROI産生能を増し、IGF-Iは周術期単球の貧食能・TNF-α産生能・HLA-DR発現能・TNFR発現能を増強した。GHやIGF-Iは外科侵襲時の宿主免疫能に関与している。GH・IGF-Iの外科侵襲時投与は宿主免疫能を改善し、宿主防御に有用である。
すべて その他
すべて 文献書誌 (16件)