研究課題/領域番号 |
08671340
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 紀 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (40170724)
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研究分担者 |
宮田 哲郎 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (70190791)
多久和 陽 東京大学, 医学部・附属病院, 助教授 (60171592)
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キーワード | PDGF / PDGFXR / アデノウィルスベクタ / 遺伝子治療 |
研究概要 |
バルーン血管拡張術は、虚血性心疾患をはじめとする閉塞性動脈硬化症の低侵襲性治療として急速に普及してきているが、同時にその高い再挟窄率(30〜50%)のため満足する結果が得られていない。その主たる原因である新生内膜形成には様々な増殖因子の関与が示唆されているものの議論も多く未だ確定していない。本研究では、内因性Platelet Derived Growth Factor-B(PDGF-B)の新生内膜形成に対する関与を厳密に評価するため、PDGF β受容体の細胞外領域をコードする遺伝子(PDGFXR)をアデノウイルスベクターに組み込み、それをバルーン障害したラット頚動脈に遺伝子導入し新生内膜形成への影響を検討した。PDGFXRは可溶性であり、細胞外にてPDGF-Bを捕捉し、その作用を特異的に阻害する作用をもつ。さらに従来より不良とされた遺伝子導入効率は、バルーン障害後5日目に遺伝子を導入することにより大幅に改善することができた。その結果、PDGFXR投与群は対照群(LacZを組み込んだアデノウイルス投与群)に比べ、内膜肥厚を57%抑制した(p<0.001)。以前私たちは内膜肥厚形成期にはPDGF β受容体の活性が増強していることを示したが、PDGFXR群では、PDGF β受容体の結成が正常血管のレベルまで抑制されていたのに対し、対照群では抑制されていなかった。そのため内膜肥厚の抑制はPDGF-Bの作用抑制による特異的なものであると考えられた。本研究によりin vivoレベルでのPDGFXRの有用性及び血管病変に対する遺伝子導入の改善が示され、これはPDGFの関与が示唆されている他の病態の解明手段として、また他の血管病変への新しい遺伝子導入方法として重要な知見を提供するものと考えられた。
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