研究概要 |
N-3系の多価不飽和脂肪酸による乳癌の発生および増殖の抑制には、n-3/n-6比が重要視され、その比が1:2ないし1:1で抑制作用があると報告されている(Abou-El-Ela SH,et al : Cancer Res 49:1434-1440,1986; Karmali RA : Prev Med 16:493-502,1987)。しかし、本邦では食生活が欧米化し、多量のn-6系の多価不飽和脂肪酸を摂取しており、それに見合うn-3多価不飽和脂肪酸(魚油に含まれるEPAあるいはDHA)を摂取することは困難になりつつある。そこで、EPAあるいはDHAを乳癌の予防薬と考え、少量のEPAあるいはDHAを間欠的に投与することにより、DMBA誘発ラット乳癌の発生および増殖を抑制できないか検討した。その結果、少量のEPAあるいはDHAを間欠的に投与することにより、乳癌の増殖は抑制されないものの、発生が抑制されることが判明した(Minami & Noguchi : Oncology 53:398-405,1996)。一方、それらの作用機序を検討するため、ラットの血清および腫瘍組織の脂肪酸組成を分析した。その結果、腫瘍組織よりも血清中のアラキドン酸値が乳癌発生抑制と相関することが明かとなった(Noguchi et al : Br J Cancer 75:348-353,1997)。現在、それらの作用機序を各種の癌遺伝子や増殖因子の関係で検討している。
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