我々はchimerismの発現と免疫寛容の獲得維持に着目してそのメカニズムを解明し、新しい移植治療法の開発を目的に本研究を計画し研究を行ってきた。 研究内容は、脾の免疫学的作用に注目して脾摘を加えた脾移植モデルを考案し、さらに生体部分移植を考慮して母子間牌移植モデルも作成した。また、2次移植として小腸移植モデルにより、脾移植の効果を評価を行った。移植片の生着の評価、chimerismの動態および免疫寛容獲得の指標として免疫組織学的分析とともに、腸管の生理運動機能に関しても検討を加えた。 我々の研究結果から、脾摘と部分脾の移植の有効性が明らかとなり、ドーナーからレシピエントへの脾の部分移植、特に母より子への脾移植により免疫の寛容が獲得され、二次移植または同時臓器移植での拒絶反応が抑制ざれる可能性が示唆された。この現象に関してはStarzlらも肝移植において、ドーナーの肝細胞がレシピエント全身にchimerismとなり、免疫の寛容が獲得され免疫抑制剤の投与も必要なくなると報告しており、極めて興味深いと考えている。我々の研究からは、脾の部分移植においてもStarzlが報告したドーナー細胞のchimerismがレシピエントに発現しうることが推測された。さらに、特に生体臓器移植における場合を考慮に入れた我々の母子間での脾移植モデルから、母から子への移植時には母の脾の移植により免疫の寛容が獲得されやすいことが示唆された。さらにその際にはレシピエントの脾摘が有用であることも明らかとなった。脾移植(ドナー特異的抗原投与)による持続的な抗原提示と、脾摘によるドナーT細胞の分化の抑制から拒絶反応やGVHDが制御されることより、chimerismの発現と免疫寛容が獲得維持が可能と考えている。我々の研究をさらに推進することにより、臓器移植に極めて有効な新しい治療法の開発が臨床的に応用しうると確信している。さらに細胞レベルでの研究を進め、これらのメカニズムを明らかにしていきたい。
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