研究概要 |
平成8年度の研究目的として、経口用タクロリムスの新剤形薬開発とその薬理動態的特長を検討した。Oil-in-Water-Type(O/W)エマルション作製上、油相のオレイン酸エチル、外水相の界面活性剤プルロニックF68はエマルションの粒子径、安定性について欠点がみられた。そのため、油相を(1)大豆油5%V/V,(2)オレイン酸1%V/Vにし、界面活性剤をTween20 1%V/Vに変更した。(1)大豆油を使ったO/Wエマルションは、市販の経口用タクロリムス製剤の薬物動態に比して、Cmaxが17%、AUC_<0-8>が28%,Biological Activityが29%と低下し、剤形の不安定性も認められた。これに比して、(2)オレイン酸は消化管への刺激性からOil/Water比を1/9に下げて作製したところ、市販の経口用タクロリムス製剤に比してCmaxが32%と低く、AUC,Biological Activityが同等の結果を得た。 タクロリムスのもつ毒性を防ぐためには、Cmaxを下げると伴に、高いAUCの得られることが必要である。また、血中濃度の個体差を少なくすることは、タクロリムス投与量の変化に対する薬物動態パラメーターの正の相関を得ることが重要である。今年度中に予定した薬物動態試験の遅れは、ラットのin vivo実験の際、麻酔剤(エーテル)の影響が予想以上にタクロリムスの吸収、代謝に関与していることが判明し、再実験をおこなわざるを得ない事情による。今後の実験予定は当初の計画通り進める。
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