研究概要 |
1.ドプラー超音波診断装置(7.5MHz)による未梢動脈血流経時的変化:新しい血流評価法として、下肢/上肢血流速度・血流量比を測定した。血行再建術を施行した34肢において、足背動脈、後脛骨動脈の流速波形を測定し、これより収縮期平均流速(MSV)、収縮期最大流速(PSV)、収縮期平均血流量(MFV)を計測した。続いて上腕動脈でも同様に計測し、それぞれの下肢/上肢の比をm-AVI、p-AVI、m-AFIとして計測した。血行再建術前後でankle pressure index(API)が平均0.55から0.77へと上昇したのに対し、m-AVIは平均0.35から0.93へ、p-AVIは平均0.25から0.80へ、m-AFIは平均0.06から0.13へと上昇した。しかし、APIが高値(0.90以上)であるにも関わらず、Fontaine分類II度以上であった症例では、m-AVI,p-AVIが0.75以下を示し、末梢flowの不良な症例であることが考えられた。逆にAPIが低値であるにも関わらず、Fontaine分類I度であった症例では、m-AVI,p-AVIが高値を示した。この結果より、新たな指標であるm-AVI,p-AVIは従来のAPIより臨床所見に相関することが示唆された。 2.虚血末梢動脈血での術前後の内皮由来血管収縮因子(ET-1)、拡張因子(NO2、NO3)の経時的変化:上記対象肢において、重症虚血肢(FontaineIII,IV度)では術前ET-1が有意に高値を示し、血行再建術後早期に低下する傾向を示した。一方、NO2、NO3値が術前高値を示した症例では、血行再建術後1週間目に正常に復した。しかし、NO2、NO3値の再上昇と共に、AVI,AFIが低下し、グラフト流量も低下した事実から、血行再建術後のfollow-up指標としてのNO2、NO3値の意義が示唆された。今後、さらに検討予定である。
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