研究概要 |
1. ドプラー超音波診断装置(7.5MHz)による末梢動脈血流の評価:68肢において、足背動脈、後脛骨動脈の流速波形を測定し、収縮期平均流速(MSV)、収縮期最大流速(PSV)、収縮期平均血流量(MFV)を計測した。上腕動脈でも同様に計測し、下肢/上肢の比をm-AVI、p-AVI、m-AFIとした。各指標ともFontaine分類別に有意差が認められた。ankle pressure index(API)とpeak-AVIでは相関(r=0.68)が認められたが、APIが0.7以上でpeak-AVIが0.5以下を呈した4肢では血管造影やエコー上、動脈硬化が強く、壁の石灰化が認められた。逆にAPIが0.7以下でpeak-AVIが0.8以上の3肢はFontaineI度で、血管造影上発達した側副血行路が認められた。この結果より、新たな指標であるm-AVI,p-AVIはAPIより臨床所見により相関した。血行再建術後は、mean-AVIで術前0.35が術後0.8に、peak-AVIで術前0.26が術後に0.70と有意に改善し、AFIでも同様の改善が認められた。 2. 虚血肢末梢での術前後の内皮由来血管収縮因子(ET-1)、拡張因子(NO2、NO3)の経時的変化:末梢血で測定されたET-1値をFontaine分類別にみると、I度(2.66±0.19pg/ml)とII度(n=23、2.65±0.16pg/ml)では有意差は認めなかったが、III度以上(n=8、3.45±0.23pg/ml)で有意に高値を示した。また、III度以上では血行再建術により、術後1週間目に平均2.64に有意に低下し、またfollow-up中さらに低下した。また、NO値については、術前高値を示した5肢において血行再建術により早期に正常域に低下したが、follow-up中グラフト狭窄の認められた2肢ではAVI,AFIの低下とともにNOの再上昇が認められた。以上より、術前NOが高値を示した症例では、NOがfollow-upの指標となりうる可能性が示唆された。
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