研究概要 |
免疫関連接着因子であるB7-1,B7-2の発現は、T細胞による初期抗原認識応答に必要であると考えられており、種々の消化器癌細胞株を用いてその発現の検索と、その発現のサイトカインによる修飾を検討した。18種の消化器癌細胞株(食道癌6種、胃癌8種、大腸癌4種)を対象とし,RT-PCR法によるB7-1,B7-2mRNAの発現およびFlowcytometry法によるB7-1,B7-2細胞表面抗原の発現を検索した。B7-1mRNAの発現は18種全種に、B7-2mRNAの発現は17種(94%)に認めた。細胞表面抗原の発現は10%以上を陽性とすると、B7-1発現陽性は72%(13/18)、B7-2発現陽性は67%(12/18)の癌細胞株に認められた。本年度は腫瘍細胞のB7-1,B7-2細胞表面抗原発現の修飾を検討する目的で、B7-1,B7-2細胞表面抗原陰性のKATO-III(胃癌細胞株)、COLO205(大腸癌)に10種類のサイトカインの存在下でその発現の変化を検索した。KATO-IIIでIL-2,IFN-α,IFN-βによってB7-1,B7-2の発現増強が認められた。COLO205では、IL-2,IL-6,TNF-α,GM-CSF,IFN-α,IFN-γでB7-1の発現増強が、またIL-2,TNF-α,IFN-α,IFN-γ,でB7-2の発現増強が認められ、特にIL-2とIFN-γの増強作用が強かった。さらに、9種類の細胞株でIFN-γの存在下の培養でIL-10を添加したところ、B7-1,B7-2の発現増強が抑制された。消化器癌細胞でB7-1,B7-2の発現が認められ、その発現がサイトカインによって修飾を受けることが明らかになった。
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