研究概要 |
(1)組織親和性の検討:polysulfone中空糸をラットの腹腔、後腹膜腔、大網(密着)、皮下、筋肉(腹直筋)に植え込み、経時的にそれぞれの部位での周辺の線維化の程度を組織学的に検索した。その結果、腹腔内が最も繊維化の程度が軽度であり、1ヵ月までは次第に進行するものの、それ以後はほぼ一定であった。 (2)ラ島の分離採取:ラ島のドナーとして、ラット(同種同系:Lewis),ハムスター(異腫、concordant)を用いる。collagenase(SigmatypeXI)消化法およびdextran非連続濃度勾配・遠心分離法によりラ島を分離採取した。ラットでは700個/匹、ハムスターでは500個/匹の採取がほぼ可能であった。 (3)人工膵モジュール(内径:300μm、膜厚:80μm、細孔径:0.1μmのpolysulfone中空糸を180本束ね、全長:15cm、有効長10cm、有効膜面積:170cm2)の移植:約3700個のラ島(モジュール内でのラ島の凝集を防止するため、ラ島を2%アガロースで分散させる)を封入した人工膵モジュールを糖尿病ラットの主として腹腔内に移植した。同系のみならず異腫(cocordant)であっても1ヵ月までは空腹時血糖をほぼ正常に維持できたが、非空腹時血糖は高値であった。このことは、腹腔内移植ではグルコースおよびインスリンの拡散に時間がかかることを示唆している。 (4)組織学的検索:では、やはり中空糸周辺に繊維化を認め、これが1ヵ月以降の機能低下の一因と考えられた。移植後1ヵ月でも中空糸内にviabilityを保ったラ島の存在が認められた。また、中空糸内にIgMの侵入は認められなかったがIgGは侵入しており、これは移植ラ島の周辺に沈着していた。
|