研究概要 |
【目的】ドナー細胞の選択的移入を行い,ラット異所性心移植アログラフトの生着延長効果について検討した。 【方法】1.ドナー細胞の分離(magnetic beads法):ドナーの脾臓を摘出し,メッシュにて粉砕。Ficoll法にて比重遠心を行い,リンパ球層を得た。NH4Clにて溶血させ,赤血球を除去し,各種モノクローナル抗体を4°C,60分反応させた。用いた抗体はOX-8(抗CD8),OX-38(抗CD4),OX-33(抗B),G4・18(抗CD3)である。anti-mouse IgGをコートしたbeads(Dynabeads M-450)を37°C,30分反応させた。反応後,磁性粒子収集装置でbeadsに結合した細胞を除去し,目的細胞を回収(negative selection)し,flow cytometryで目的細胞のpurityを確認した。2.異所性心移植:250-300gのBN(RT1^n)をドナーに,Lewis(RT1^l)をレシピエントとし,Ono&Lindseyの方法を用いて,腹部に異所性心移植を行った。移植同時に2x10^7個の脾細胞あるいは選択的に分離したドナー細胞を陰茎静脈より投与した。免疫抑制はFK506を0.5mg/kgを術前日,術日,術後1日目の3日間のみ筋肉内投与した。触診にて心停止と判断した日を拒絶日とした。 【結果】1)目的細胞のpurity:B細胞(CD3(-)細胞);約90%,CD4+細胞;約90%,CD8+細胞;約65%であり,比較的高純度の細胞を効率的に分離・回収し得た。2)グラフト生着期間:control(n=5);6.8±0.4日,FK506単独投与群(n=7);13.7±2.7日,脾細胞投与群(n=7);15.7±5.3日,CD4+細胞投与群(n=7);10.0±1.5日,CD8+細胞投与群(n=7);10.4±1.6日,B細胞投与群(n=6);19.5±4.4日であった。B細胞の投与がFK506単独投与に比べて,有意に生着延長効果があった。(t検定;p=0.014) 【まとめ】1.magnetic beads法によりドナー細胞を簡便に,比較的高純度に分離し得た。2.生着延長にはB細胞の投与が最も効果的であった。
|