研究概要 |
【目的】 ラット異所性心移植モデルにおいて,移植時ドナー細胞の選択的移入により,allograftの生着延長効果,免疫寛容が得られるか否かを検討した. 【方法】 平成9年度までの研究結果により,ドナーB細胞の移植時同時投与が有意にallograftの生着延長をもたらすことが明らかとなった.本年度はさらにその効果を高めるため,移入細胞数,免疫抑制剤の投与量,投与時期を変えて検討した.すなわち,FK506の投与量を倍量の1.0mg/kgで、より臨床応用を考慮して術当日,POD1,POD2の3回投与とし,B細胞数を2.5倍の5.0x10^7として次の2群について生着延長効果を評価した.A群:FK506投与群,B群:B細胞+FK506投与群. 【結果】 A群におけるgraftの平均生着期間は33.0±3.7日(n=6),B群では48.3±14.0(n=4)であり,最長生着期間はA群では38日,B群では70日であった.昨年度に得られたB細胞2.0x10^7個+FK506 0.5mg/kg(POD-1,POD 0,POD 1)群での平均生着期間19.5±4.4日(n=6)に比べて著明な生着延長効果を認め,特にB群において顕著であった.しかし免疫寛容の獲得に至る効果は得られなかった. 【まとめ】 1. ラット異所性心移植モデルにおいて,B細胞の移植時同時移入および短期間の免疫抑制剤投与により,著明なallograft生着延長効果が得られた. 2. しかし免疫寛容の獲得には至らず,移入細胞数,併用免疫抑制法のさらなる検討が必要と考えられた.
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