研究概要 |
1.熱傷ラットにおける一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害剤投与 Spraugue-Dowleyラットを用いネンブタール40mg/kg腹腔内投与麻酔下に体表面積の30%熱傷(熱傷ショック)モデルを作成した.10ml/kgの生食水腹腔内投与によるresuscitationとともにNOS阻害剤(L-N-monomethl-arginine,L-NMMA,N-nitro-L-arginine methylester:L-NAME,aminoguanidine,AG)をそれぞれ50mg/kg,10mg/kg,100mg/kg投与した.NO3の尿中排泄量はコントロール群(n=4)では2〜4病日平均5144〜8064μMol/L・日で,NOS阻害剤投与群では平均348〜700μMol/L・日で,NOS投与群で減少していた.薬剤間ではiNOS阻害作用を有するL-NMMA,AG投与ラットでNO3の尿中排泄はより抑制される傾向がみられた.また7週後の熱傷創はiNOSのみの阻害作用を有するAG投与ラットでは他薬剤投与ラットに比しrawsurfaceareaが少ない傾向がみられた.すなわちiNOS阻害は創傷治癒面において益する可能性があると考えられた. 2.外科系重症患者におけるNO基質投与 ICU入室患者12名においてNO基質のアルギメート(AM)200ml/30分負荷を行った.AM負荷前NOx(=NO2+NO3)血漿濃度68±80umol/Lで,NOx高値例ではsBPは低値で,心機能も低下していた.AM負荷によりNOxのAM負荷後/前比は生存群で低い(0.95【+-】0.10vs1.07【+-】0.11)にも係わらず心機能改善,SVR・PVR低下が認められた.生存群ではdtrulineの後/前比が死亡群と差がない(1.3【+-】0.1vs1.3【+-】0.4)のに対し,ornitine濃度の後/前比が死亡群に比し大きい(12.4【+-】7.2vs8.7【+-】3.1)ことより,生存群でのAM投与の効果は,ArgがNO合成酵素系比しornitine回路系でより多く代謝されたためと考えられた.
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