熱傷ショック期〜早期における熱傷創の微小循環動態を熱傷創のintegrityを観察することにより検討した。また、微小循環に関係する一酸化窒素(NO)合成酵素であるiNOS、cNOSの抑制剤を用い微小循環をモジュレーションした際の熱傷創微小循環に対する影響について検討した。 250〜300gのSpraugue-Dowleyラットを用いネンブタール40mg/kg腹腔内投与麻酔下、背部を剃毛後、脱毛クリームにて脱毛、boiling waterに15秒間背部を体表面積の30%浸すことによりIII度熱傷モデルを作成した。10ml/kgの生食によるresuscitationと同時に、cNOS抑制剤(N^G-nitro-L-arginine)10mg/kgまたは、iNOS抑制剤(aminoguanidine)100mg/kgを腹腔内投与(1〜7日)し、1〜7日の蓄尿検体にて、NO_2、NO_3、カテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドパミン)、17OHCS、Na、K、3-メチルヒスチジン、ハイドロオキシプロリンを測定した。 結果: 1.熱傷早期のNO代謝物(NO_2+NO_3)の尿中排泄はiNOS優位と考えられた。 2.iNOS抑制剤は2-3日の熱傷創からの不感蒸泄量を低下させる傾向がみられた。 3.iNOS抑制剤は2日のグルココルチコイドの分泌抑制、2-3日のアルドステロン(Na/K比より推定)、アドレナリン、ノルアドレナリンの分泌亢進に関係した。 4.cNOS抑制剤は3日のアルドステロン分泌を亢進する傾向があり、一方、ドパミン分泌を抑制、3-メチルヒスチジン、ハイドロオキシプロリンの遊離を抑制した。 結語:熱傷ショック期〜早期におけるiNOS抑制剤投与は熱傷創の微小循環維持に関係し熱傷創のintegrityの保持に有益と考えられた。また、同期におけるcNOS抑制剤投与は創傷治癒過程に不利と考えられた。
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