研究概要 |
平成9年度の研究にて,「熱傷ショック期〜早期におけるiNOS抑制剤投与は熱傷創の微小循環維持に有用と考えられる」との結果を得たが,平成10年度では、臨床で使用可能な薬剤のうちiNOS抑制効果を有する薬剤を模索すべく研究を進めた. iNOSはsepsis時に多く産生されるため,モデルとして非ショック,エンドトキセミアを作製,薬剤としてsepsisに合併するDICに対し使用される多価protease inhibitorであるFUT-175を選択した. 対象と方法:ネンプタール40mg/kg腹腔内麻酔下,雄性SDラット(350-500g)に頚動脈カニュレーション、腹部大動脈にCalibrated Pressure Analog Adaptorを挿入した.30分後より,漫性実験テレメトリー自動計測システムにて,動脈圧をモニターしつつ,エンドトキシン(Et)群(n=5)では頚動脈よりEt 5mg/kgを15分間隔で3回,30分後にEt 10mg/kgを20分間隔で2回投与,この20分後に頚動脈からの採血による脱血にて犠死せしめた.Et+FUT群(n=4)では初回Et投与30分前にFUT-1752mg/kgを,2回目,4回目Et投与5分前にFUT-1751mg/kgを頚動脈より投与した.control(c)群(n=5)ではEt,FUTの代わりに生食水を同量投与した.血漿検体にてNO2,N03をGriess法にて測定した.また,肺,肝,胃のNO合成酵素(iNOS,cNOS)を測定した. 結果:いずれの群においても一過性の血圧低下を除きショックとなるラットはみられなかった.NOx(=NO2+NO3)濃度はC群,Et群,Et+FUT群それぞれ,19.4±2.1μM/L,36.0±4.1(p=0.013 vs C群)26.5±7.4であった.cNOSはC群,B群,Et+FUT群それぞれ,肝233±21 pM/h/prol(mg),363±10(p=0.045 vs C群),345±79;肺 108±17,226±16(p=0.043 vs C群),155±27;胃85±14,129±9,113±18,iNOSは各群それぞれ,肝 348±36,952±92(p=0.010 vs C群),493±35(p=0.037 vs C群,p=0.010 vs Et群);肺174±20,581±74(p=0.002 vs C群),261±32(p=0.017 vs B群),胃 44±5,222±23(p=0.0003 vs C群),86±4(p=0.002 vs C群,p=0.004 vs B群)であった. 結語:FUT-175はEtによる血中NOx濃度,組織cNOSの誘導に影響しなかったが,Bによる組織iNOSの誘導を有意に抑制した.
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