実験小動物を用いた頭蓋顔面の形態学的研究におけるX線規格写真撮影に用いるべく規格再現性の高い頭部固定装置を考案開発し、側方位、軸位での基準値を算定した。 ウイスター系ラット8週令(250gr前後)20匹、11週令(300gr前後)20匹の頭部を切断し、本装置に切歯歯槽縁と両側外耳道孔上縁を結ぶ線がフイルム面と平行になるように固定、軟X線撮影装置(ソフロンR SRO-M50;ソフロン社製)を用いて側方位、軸位を各固体に付き、各々3回撮影した。管球-フイルム間距離は45cm、軸位におけるフイルム-イヤーロッド中点間距離5.5cm、側方位におけるフイルム-イヤーロッド中点間距離は5cmである。各撮影平面における基準点を撮影したX線フイルムから測定し、これらの平均値を算定し基準値とするが、計測は熟練した同一施術者が3日間にわたり、3回の操作をおこなってその平均値とした。 8週令ラット側方位計測値:頭蓋顔面前後長49.2±1.0、頭蓋前後長26.8±1.0、鼻骨前後長24.6±1.0、切歯骨前後長15.1±0.7、上顎骨前後長20.9±0.6、頬骨前後長8.3±0.3、8週令ラット軸位計測値:軸位最大前後長49.5±1.2、切歯骨最大幅9.5±0.3、眼窩間距離7.3±0.3、臼歯部最大幅10.4±0.4、頬骨弓最大幅26.8±0.5、外耳道間距離19.4±0.3、頭頂骨前後長9.7±0.5、11週令ラット側方位計測値:頭蓋顔面前後長51.9±0.7、頭蓋前後長27.8±0.4、鼻骨前後長25.4±0.3、切歯骨前後長15.4±0.4、上顎骨前後長22.5±0.6、頬骨前後長8.8±0.3、11週令ラット軸位計測値:軸位最大前後長51.9±0.9、切歯骨最大幅10.1±0.3、眼窩間距離8.0±0.2、臼歯部最大幅11.7±0.3、頬骨弓最大幅28.2±0.5、外耳道間距離20.1±0.2、頭頂骨前後長10.3±0.4を計測値として得た。また3回の計測における標本装置固定による誤差、軟X線撮影装置内設置による誤差、フイルム読み取り誤差を評価すべく、3回にこの計測値の標準偏差、標準誤差を算出すると、側方位において標準誤差0〜0.21、軸位にて0〜0.17と信頼性(精確さ)の高いものとなった。 次年度の研究継続とし、拡大率補正後の値と乾燥頭蓋骨実測値との比較中であり、各標本個体の計測の正確性を今後の課題とし、成長生体における実験の応用を予定している。
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