昨年度は実験小動物のためのX線規格写真用頭部固定装置(ラット用)により規格写真用撮影による基準値を算定、高い規格再現性(側方位標準誤差0〜0.21、軸位標準誤差0〜0.17)を得た。 今年度の実験の目的はX線フィルム測定値の拡大率補正後の値と乾燥頭蓋骨実測値との比較・検討であり、ウィスター系ラット8周令、11周令各20匹の頭部を乾燥頭蓋骨とし、前回と同様の計測点を実測し、これをX線フィルム測定値の拡大率補正した値と比較した。以下に軸位、側方位別の結果を示す。 1.軸位計測値:1)8周令11周令を比較して、計測項目別に減少に似た傾向がみられた。2)軸位最大前後長の誤差が最小であった。3)切歯骨最大幅計測比較において歯牙(切歯)と骨(切歯骨)との縮小率の差異を示唆する。4)頭頂骨前後長の計測において冠状縫合および頭頂骨頭頂間骨縫合の計測に問題があり、軸位計測値として不適当と思われた。5)計測値差異は幅径>長径の傾向があった。6)計測時誤差による不適当な計測項目の除外が必要と思われた。7)部位別縮小率の検討を要する。 2.側方位計測値:1)8周令11周令を比較して、計測項目別に増減に似た傾向がみられた。2)軸位計測と同様に頭蓋顔面前後長の誤差が最小であった。3)頭蓋前後長と鼻骨前後長の実測値補正値比較における増減を加えると6.1%↓(8周令)、8.0%↓(11周令)となり、頭蓋顔面前後長の誤差に近づいた。4)頭蓋前後長と鼻骨前後長の計測において前頭鼻骨縫合の計測に問題があると考えらた。5)頬骨前後長・切歯骨前後長は側方位計測値として不適当と思われた。6)側方位計測ではとくに計測時誤差による不適当な計測項目の除外が必要と考えられた。7)部位別縮小率の検討を要する。生体計測と屠殺後乾燥頭蓋計測を併せて行う場合、とくに縮小率の標準値の設定が必要である。8)その他、乾燥頭蓋作成時の切歯・頬骨(頬骨弓部)・鼓室骨・頭頂間骨の脱落による計測誤差も考慮すべきと思われた。 今後、家兎や猿用の固定装置によっても標準値の算定をし、乾燥頭蓋骨作成時の部位別縮小率も同様に検討する。また、この標準値を参考にし、家兎頭蓋冠骨のdistractionをGuerrero Craniofacial Distractorを用いてrapid distraction群とgradual distraction群に分けて頭蓋腔拡大および延長後の後戻りについての比較・検討を行う予定である。
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