研究概要 |
【目的】実験小動物を用いてcraniofacial distractionによる頭蓋拡大の経時的検討を1)gradual distractionとrapid distractionの比較、2)それぞれの方法によるrelapseの比較において行った。 【方法と材料】体重約3kgの日本白色家兎8羽を用い、Guerrero:ウェルズ社製Craniofacial Distractorを用いてcraniofacial distractionを行った。ネンプタール静脈麻酔下に家兎を実験用固定器に設置し、頭皮を矢状I字切開し、両側冠状縫合を外側は側頭線から眼窩口前方へ向かう骨切りを全層で行った。 Craniofacial Distractorのフック固定部位のみ硬膜を剥離し、これをブレグマに左右対称に固定した。Distractionの速度を2群に分け、以下のタイムテーブルにより実験を行った。 rapid distraction群(R群) (4羽) 1.0mm/×1日、3.0mm/日×2日、4.0mm/日×2日 gradual distraction群(G群) (4羽) 0.5mm/日×6日、1.0mm/日×12日 ソフロンによる軟X線撮影を経時的に行い(延長前,延長終了時,1週間後延長器除去直後,延長器除去3日後,1週間後)、仮骨、後戻りの状態を観察した。 【結果】1)R群;前頭骨前後長+頭頂後頭前後長は平均2.15mm増加(≒骨新生距離)、前頭骨前後長+頭頂後頭前後長-骨延長部は平均0.30mm減少(≒後戻り距離) 2) G群:前頭骨前後長+頭頂後頭前後長は平均3.65mm増加(≒骨新生距離)、前頭骨前後長+頭頂後頭前後長-骨延長部は平均0.20mm減少(≒後戻り距離) 3) G群・R群終了各2例ずつにおいて延長部位矢状断組織作成し、断端中央部での骨新生(類骨細胞の出現)、骨膜および硬膜側での骨膜反応(骨膜下骨新生)を観察、硬膜は断裂無く炎症反応と硬膜肥厚を見た。 【結論】骨延長部の軟X線による経時的観察により、緩徐群は急速群に比して骨新生距離が有意に長く、後戻り距離も少なく、これは骨延長部周囲の組織学的観察によっても同様の所見を得た。つまり、実験小動物における頭蓋拡大はより緩徐に行うものが、骨新生がより多く、後戻りも少ないため有利と考えられた。
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