研究概要 |
【目的】進行癌で検出される程度の遺伝子変異のある乳癌が早期癌にも存在することと早期癌の数%が再発を来すこと,遺伝子変異の重複を示す乳癌は予後不良なことなどから,乳癌の悪性度は,遺伝子変化を解析することによりさらに厳密な評価をし得ると考えられる。また、遺伝子変化の解析に組織学的悪性度(Modified Scarff-Bloom-Richardson histological grading system)を加味し,両者を基に生物学的悪性度を推測し,実健存率,実生存率より早期乳癌におけるhigh risk groupを選別する。同様に局所進行乳癌においても解析し、high risk groupとlow risk groupの検討を加える。【経過】約180例の原発性乳癌を対象に,複数の癌遺伝子の解析および染色体の対立遺伝子欠失(LOH)の解析を行って。その結果,tln0m0早期癌19例のうち8例に何らかの遺伝子変異がみられ,しかもそのうち1例に複数の遺伝子変異を認めた。stageIIIbやstageIVなどの局所進行乳癌や進行癌は,stageIやstageIIの乳癌と比べmyc,int-2,erbB-2遺伝子増幅や11p,16q,17p,17q,18qでのLOH頻度が高かった。また,17qLOHかつerbB-2増幅を示す7例中4例は2年以内に死亡したが,両遺伝子変化の検出されなかった53例全例の生存を確認した。erbB-2の過剰発現については,少なくとも20%の乳癌の発生・進展において比較的早期に認められた。多変量解析の結果から,17qLOHとerbB2の過剰発現は再発に関して独立した予後因子となることが示唆された。組織学的悪性度からの検討では、早期乳癌、局所進行乳癌のいずれにおいても核異型度、核分裂度が有用な予後因子となることが示唆された。
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