研究概要 |
臨床により近い乳癌術後転移実験モデルを作製することを目指し,まずMKL転移モデルにおける微小転移発生のタイミングを検討した。MKL細胞をヌードマウスのmammary fat padに接種し,2週間後より毎週マウスを犠牲死させ,原発腫瘍重量と微小転移の程度との相関を検討した。その結果,細胞接種後3週間目よりMKL細胞の微小転移(リンパ節転移ならびに血行性肺転移)が起こることが判明した。さらに,腫瘍切除の至適なタイミングを調べる目的で,細胞接種3週間目および5週間目に原発腫瘍を切除し,その4週間後の微小転移の進展を手術非施行群と比較検討した。その結果,腫瘍切除がその後の微小転移の進展を促進すること,さらに,細胞接種3週間目の腫瘍切除の方が,微小転移の進展促進効果が高いことが示された。次に,現在臨床の場で術後補助療法に繁用されている5-FU系の代謝拮抗物質UFTの至適な投与量を再検討する目的で,15mg/kgまたは20mg/kgのUFTをMKL細胞担癌マウスに4週間経口投与した。その結果,どちらの用量においても,UFTが原発腫瘍の増殖と転移の進展を抑制することが示された。そこでUFTの腫瘍切除後の微小転移進展抑制効果を最後に調べた。その結果,15mg/kgおよび20mg/kgのUFT4週間投与が,脳・肺・肝・骨および近傍・遠隔リンパ節すべてにおける微小転移の進展を有意に抑制することが証明された。本実験により,乳癌術後転移実験モデルがほぼ完成した。今後は,血管新生抑制物質TNP-470のこのモデルにおける効果を検討する予定である。また,新しい乳癌細胞株KPL-3Cの樹立,PTHrP分泌の制御に関する検討も行った。
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