研究概要 |
1.低酸素血症による急性胃粘膜障害発生モデルの作成:任意の低酸素環境を設定できる低酸素チェンバーを作成し,ラットに低酸素を負荷し潰瘍発生の有無を検討した.その結果,10%の低酸素負荷にて胃体部に線状の潰瘍発生を認めた.以前より我々はTBA反応物質が急性胃粘膜障害発生時には上昇することを明らかにしてきたが,後述するCL-HPLC法により測定したPCOOHも低酸素条件下で発生した急性胃粘膜病変では有意に増加していた. 2.CL-HPLC法による過酸化脂質物質(PCOOH)の測定:宮沢らの方法による蛍光高速液体クロマトグラフィーにより小腸粘膜より抽出した過酸化脂質をピコモルレベルで測定することに成功した.実験に用いたのは小腸虚血再潅流障害モデルである.虚血時間を30分とし虚血のみ及び再潅流後の30分小腸粘膜内TBA反応物質を測定したところ正常無処置対照群,虚血群,再潅流群で有意な変化はみられなかった.一方,PCOOHは再潅流群で,正常対照群,虚血群いずれに対しても有意に増加した.正常対照群と虚血群では有為な差は認めなかった.このことより,TBA反応物質が動かない軽度の病変で,すでにPCOOHが有意に変化していることが明らかにされ,あわせてPCOOH測定が鋭敏かつ高感度な測定系であることが明らかになった.
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