研究概要 |
1.CL-HPLC法による脂質過酸化物(PCOOH)の測定:宮澤らの方法による化学発光高速液体クロマトグラフィー法により小腸粘膜内PCOOH測定を試み,ピコモルレベルでの測定に成功した.実験にはラット小腸虚血再灌流モデルを用いた.虚血時間を30分とし,虚血のみの群,再灌流30分,60分,120分,180分,360分後に小腸を摘出した群,および無処置の群で粘膜内チオバルビタール反応物質(TBARS)をPCOOHを測定比較した.また各群の粘膜障害の程度,多核白血球浸潤の程度を組織学的に検討した.その結果,粘膜障害は再灌流後30から120分で虚血のみの群より高度であった.白血球浸潤も再灌流後30から180分で顕著nであった.しかしTBARSは全経過を通じて有意な変化が見られなかった.一方PCOOHは再灌流後30分で,無処置群,虚血のみの群に比べ有意に増加していた.これらの結果からTBARSの変化としてとらえられない軽徴な粘膜障害でも脂質が過酸化されていることが明らかとなり,かつCL-HPLC法によるPCOOH測定が高感度の測定系であることが明らかとなった. 低酸素血症による急性胃粘膜障害モデルの作成:任意の低酸素環境を設定できる低酸素チェンバーを作製し,ラットを酸素濃度10%の環境に拘束し急性胃粘膜障害モデルを作製した.この方法で胃粘膜に線状の潰瘍が発生することを確認し,さらにCL-HPLC法にて胃粘膜内PCOOHを測定した.その結果、通常の酸素濃度環境で拘束した群に比べ,低酸素環境下では胃粘膜内PCOOHが増加する傾向が認められた.
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