研究概要 |
われわれは、接着分子ICAM-1およびLFA-1抗体の投与により移植ラ島を長期生着させることが可能となることを明らかとしたが、この時のRT-PCRを用いた解析により、長期生着したグラフト周囲の浸潤リンパ球では液性免疫反応を刺激するIL-4とIL-10のmRNAが発現し、細胞性免疫反応を増強させるIL-2やIFNγの発現が見られないことを突き止めた。すなわち、液性免疫反応が優位となるような免疫調節が可能であれば、グラフトに対する拒絶反応を低下させることが可能と考えられた。そこで、IL-2やIFNγ等の産生を刺激することによって、細胞性免疫反応を担うTh1細胞を増殖させるIL-12に着目した。 同種ラ島移植モデルマウスを用い、抗IL-12抗体の腹腔内投与によりIL-12の作用を阻害した。グラフの生着期間が延長したが、ICAM-1/LFA-1抗体投与時に見られたような免疫寛容は誘導できなかった。このため、グラフは抗体投与の中止後に拒絶された。おそらくサイト力インのみの制御は接着分子を介した免疫応答の制御とは異なり、抗原に対する記憶が残らないものと考えられた。 更に全身的なコントロールではなく、局所的なコントロールで拒絶反応を制御する試みを検討した。IL-12は他のインターリューキンと異なり40kD(p40)と35kD(p35)からなるヘテロダイマーであるが、このp40またはp35を単独または単に混合しただけではIL-12としての活性は発揮されない。そこでp40のcDNAのみを細胞に遺伝子導入すると、p40とp40とのへテロダイマーを形成し、これがリンパ球上に存在するIL-12のレセプターに結合し、その結果、本来の活性を有するIL-12がレセプターに結合できなくなる。当初、局所免疫環境を維持する方法としてこのIL-12,p40遺伝子に着目し、このcDNAを線維芽細胞に導入し、移植するラ島と混合してレシピエントのマウスに移植する実験を行ったが、腎被膜下のスペースに限りがあり、技術的な課題を残している。
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