本年度研究においては、遺伝性消化管腫瘍の資料収集と並行して一般大腸癌におけるアポートシスの実体について検討した。 [方法]1989年から1991年までに切除された大腸癌のうちsm癌7例、pm癌20例、およびss癌19例を対象とした。切除標本は通常の病理組織標本用にホルマリン固定した。パラフィン切片は病理標本作製用のブロックの残りの一部を用いた。これをHE染色用とアポートシス染色用に4から5マイクロの厚さの薄切断片とした。アポートシス検出にはTUNEL法(ONCOR社、Apop-Tag In Situ Apoptosis Detection Kitを使用)を用いて染色した。アポートシス計数は400倍検鏡下に癌細胞1000個を数え、その中のアポートシス細胞数で示したが、3ヵ所の平均をとった値とした。 [結果]大腸癌の深達度別アポートシス数は深達度が高いもの(SS)は低いもの(sm)に比べてアポートシスが多く認められた。これを更に分化度別に分けると、高分化sm癌では低く2.22(6 cases)、低分化ss癌では高い傾向を認めた8.28(4)。 [考察および結論]大腸癌においては深達度の進むほど、また高分化より中分化癌においてアポートシスが多くなる傾向を認めた。この意味については十分明らかではないが、癌の進行とともに遺伝子欠陥が蓄積されるため、細胞分裂も活発な一方でアポートシスも増えるとしても矛盾がないと考えられる。
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