平成8年度研究実績:術後の腸管運動障害と術後愁訴の関連を明かとすることを目的に、本年度は主として食道切除後結腸による再建のなされた患者群の消化管運動測定を行った。24-h ambulatory manometryにより本術式に特徴的な消化管運動パターンを解明すると同時に、間置結腸が代用食道として適切か否かを検討した。 6ch内圧センサーを間置結腸に留置し、行動、食事などの日常生活を制限することなく24時間の腸管運動のモニタリングを施行。データはPCを用いて専用ソフトで処理解析した。 再建結腸運動の日内運動で最も特徴的変化は食事摂取に伴ったphasic contraction出現で、約60分間持続した。その平均振幅は31【.+-。】9mmHg、食事開始より1時間のMotility Index (MI)は5.8【.+-。】0.5であった。一方、睡眠中は間置結腸内の収縮波出現は少なく運動抑制状態を示した。また、再建結腸内を伝播する特異な強収縮波(Migrating Propagated Contraction)は食後期と起床直後に多く認められた。以上、食事による連続的律動波出現と食後のmotility indexの著明増加より、再建結腸は代用食道として合目的に機能していることを明らかとした。 平成9年度研究予定:1)異常運動様式に注目し、それが術後の愁訴、症状といかなる関係にあるかを検討する、2)もう一つの代表的食道再建臓器である胃を用いた胃管再建例との比較検討、3)バロスタット法により代用食道(胃、結腸)の壁伸展特性(クンプライアンス)を明かとし、同時にバルーンの拡張刺激に対する腸管の知覚異常(visceral sensation)の有無についても検討する予定で現在研究を継続中である。
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