術後の腸管運動障害と術後愁訴の関連を明かとすることを目的に、本年度は主として潰瘍性大腸炎治療に大腸全摘術を行いW型回腸嚢による再建のなされた患者群の消化管運動測定を行った。エレクトロニック バロスタットを用いて回腸嚢の壁伸展特性(コンプライアンス)を明かとし、本術式に特徴的な消化管運動パターンを解明するとともに、バルーンの拡張刺激に対する腸管の知覚異常(visceral sensation)の有無についても検討しW型回腸嚢が代用直腸として機能しているか否かを検討した。 極薄のポリエチレン製バルーンをセンサーとし回腸嚢内に留置し、SVS/Barostat system用いて腸管運動のモニタリングを施行。また段階的に負荷圧を上昇させ圧-容量曲線より壁伸展特性(コンプライアンス)を測定、データタはPCを用いて専用ソフトで処理解析した。さらに、被検者には拡張刺激に対する知覚(センセーション)を報告してもらい、それをスコアに換算して腸管知覚異常の有無を評価した。知覚 値容量は109ml、最小便意容量は234ml、最大耐用量は295mlであった。回腸嚢のコンプライアンスは術後経過期間ならびに排便機能臨床スコアと相関が見られた。術後の回腸嚢の経時的機能改善は壁のコンプライアンスの増大と便貯留能増加が大きな要因となっていることを明らかとした。 今後、回腸嚢の異常運動様式に注目し、それが術後の愁訴、症状といかなる関係にあるかを検討する予定である。また、今回と同様の手法で代用食道(胃、結腸)や胃切除後の残胃の壁伸展特性(コンプライアンス)を明かとし、バルーンの拡張刺激に対する腸管の知覚異常(visceral sensation)の有無いついても検討する予定で、現在研究を継続中である。
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