肝臓胆道外科では、近年大量肝切除および肝臓を含めた他臓器の合併切除が増加している。それに伴い、肝切除後肝再生における肝組織中の細胞性免疫が重要であることが判明しつつある。しかし、いまだ肝切除後の肝再生の機序については不明なことが多い。この研究では、ラットモデルにおいて肝切除後の急性門脈圧亢進がshear stressとしての肝再生のトリガーとなりうるかどうかについて検討した。門脈圧は70%、90%肝切除後すぐに上昇し、3病日に最高値となり、その後肝再生の減少とともに下降した。90%肝切除後の門脈圧は7病日でさえも、70%肝切除後よりも有意に高値であった。70%肝切除では4病日に肝重量は正常に戻り、90%肝切除では7病日に戻った。この間、脾臓の重量は上昇したままだが、胸腺の重量は高い門脈圧に一致して7病日に著明に減少した。70%肝切除における肝類洞内皮細胞のclass I抗原発現は2病目が最も高く、14病日にはコントロール値に戻った。正常肝臓におけるclass I抗原発現は、最も門脈圧の高い門脈周囲においてのみみられるが、70%肝切除では門脈周囲領域から中心静脈領域にかけての肝類洞内皮細胞に発現していた。これらのことより、肝再生後の急性門脈圧亢進は肝細胞だけでなく肝類洞内皮細胞の再生のトリガーとなり、高度な急性門脈圧亢進では肝機能不全を引き起こすことが示された。
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