本年度においては食道癌切除後胸腔浸出液の細胞診が施行された57症例について細胞診の成績と臨床病理所見の関連を検討した(検討1)。さらに最近の12症例について術後胸腔浸出液のテロメラーゼ活性をTRAP(Telomere Repeat Amplication Protocol)法で測定し、細胞診の成績と比較した(検討2)。検討1:胸腔浸出液細胞診陽性(Class IVおよびClass V)は23例(40%)であった。細胞診陰性群と陽性群の間に原発巣壁深達度、脈管侵襲陽性率、およびリンパ節転移陽性率で有意差は認められなかった。癌再発は細胞診陰性群の14例(41%)に、陽性群の11例(48%)に発生した。再発例のうち局所縦隔再発の頻度は細胞診陰性群の36%に比較し陽性群では64%と高率であったが有意差はなかった。陽性群の1例は開胸創にimplantationを呈した。局所縦隔再発単独は細胞診陰性群の2例のみで陽性群は全例が多臓器再発であった。細胞診陰性群と陽性群の切除後4年生存率はともに60%で両群の生存曲線に有意差を認めなかった。検討2:凍結保存しておいた最近の12症例の検体を解凍しTRAP法で胸腔浸出液のテロメラーゼ活性を測定した。その結果は測定した12例全例がテロメラーゼ活性は陰性であった。同時に施行した細胞診では全例がClass IあるいはClass IIで癌細胞陰性と判定された。今回測定した検体では癌細胞陰性であったがTRAP法によるテロメラーゼ活性測定結果と細胞診の結果は全例で一致した。次年度は測定症例数を更に追加し最終的な解析と研究の総括を行う予定である。
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