本年度においては研究対象症例の切除時および切除後経過について臨床病理学的な詳細な解析を行うとともに2例の検体を追加し術後早期胸腔浸出液のテロメラーゼ活性と細胞診の結果を比較した。検討1(食道癌切除後胸腔浸出液の細胞診と切除時臨床病理所見および術後転帰の関連):胸腔浸出液細胞診陽性群(n=23)において食道外膜浸潤陽性は48%、リンパ管侵襲陽性は83%、静脈侵襲陽性は53%、リンパ節転移は65%で、細胞診陰性群(n=34)では各々71%、71%、71%、65%で両群に有意差は認められなかった。また根治切除率も細胞診陽性群の100%に対し、陰性群では97%と両群に有意差はなかった。切除後癌再発率は細胞診陽性群で48%、細胞診陰性群では41%と両群で有意差は認められなかった。また再発例中局所縦隔再発の頻度も細胞診陰性群の36%に比較し陽性群で64%と高率であったが有意差はなかった。さらに切除後予後も細胞診陽性群で4年生存率60%、細胞診陰性群も60%と両群間に有意差はなかった。検討2(術後胸腔浸出液の細胞診とテロメラーゼ活性の関連):本年度新たに2症例の食道癌切除後早期胸腔浸出液のテロメラーゼ活性と細胞診の比較を行った。テロメラーゼ活性はTRAP法により測定した。その結果は2例ともテロメラーゼ活性を浸出液中に認めず浸出液中の細胞診もClass IIで癌細胞陰性と判定された。今回も胸腔浸出液中の癌細胞陰性症例での比較となったが2例とも細胞診の結果とTRAP法によるテロメラーゼ活性測定結果は一致した。
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