研究概要 |
これまでの研究から,(1)虚血・再灌流刺激によってサイトカイン遺伝子の転写因子NF-κBの活性が増強され,これはチロシンキナーゼ阻害剤によって抑制される.(2)肝の虚血・再灌流障害には炎症性サイトカインであるTNF-α,IL-6が関与する.(3)チロシンキナーゼ阻害剤が肝虚血・再灌流障害を抑制する.ことを明らかにした。そこで,細胞内シグナル伝達系に関わるJNK(c-Jun N terminal kinase)(細胞外ストレスに対して活性化し,アポトーシスの誘導に関与することが報告された)と,虚血・再灌流障害との関連に注目し,マウス肝虚血・再灌流モデルにおけるJNKの活性化と肝細胞障害およびアポトーシスについて検討し,以下の結果を得た。 (1)10,15,30分の虚血のみではJNKの活性化は見られなかった。 (2)肝障害が最も軽度であった10分虚血群において,再灌流後のJNKの活性化は最も強く認められた。 (3)虚血・再灌流後の肝細胞アポトーシスの検討では,10分虚血群でアポトーシス細胞を最も多く認められた。 以上の結果から,虚血・再灌流後のJNKの活性化と肝細胞アポトーシスは,細胞障害に対する保護的役割を担っていることが示唆された。
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