小腸粘膜の再生増殖に対するGln添加成分栄養剤投与の影響を検討するため、同所性小腸移植後の実験群を、Gln無添加成分栄養剤を与えたGln非投与群と、Glnを添加したグルタミン添加成分栄養剤を与えたGln投与群に分け、免疫抑制剤としてFK506を投与した。7日目にブロモデオキシウリジン(BrdU)を腹腔内に注入し、2時間後に移植腸管を摘出した。血中のGln、アラニン、グルタミン酸の濃度を高速液体クロマトグラフィを用いて、エンドトキシン濃度を比色測定法にて、移植小腸粘膜のホモジネート液中のアルカリフォスファターゼ(ALP)活性をKind King法にて測定した。移植小腸粘膜の組織浮遊液とヘパリン加血液の全リンパ球に対するT細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞の比率と、組織標本のBrdU標識率を算定し、次の結果を得た。1)術後の両群の体重と経口摂取量には差を認めなかった。2)Gln投与群の血中のGln濃度はGln非投与群に比べて有意に高く、両群のグルタミン酸濃度には差を認めなかった。3)Gln投与群の血中エンドトキシン濃度は、Gln非投与群に比べ有意に低かった。4)血中および小腸粘膜ともにGln投与群ではGln非投与群に比べ、ヘルパーT細胞の比率は有意に高かった。5)両群ともに組織学的な拒絶反応は認められなかった。6)Gln投与群の小腸粘膜のALP活性とBrdU標識率はGln非投与群に比べて有意に高かった。以上より、Gln無添加成分栄養剤の投与は小腸移植後の免疫抑制剤投与時の粘膜の再生と分化能を低下させるが、Gln添加成分栄養剤の投与は腸管の局所免疫機能を保持し、粘膜の再生と分化能の低下を抑制することが示された。今後はプロトオンコジーン産物であるc-fos、c-junの発現と小腸大量切除後の残存小腸におけるグルタミン投与時の組織学的変化の関連を検討する。
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