生体肝移植において肝動脈の再建は要の一つであり、いかに肝動脈を再建するかは重要な課題である。今回の検討により以下のことが明らかになった。生体部分肝移植における細く短い肝動脈の再建にマイクロサージェリーを用いることは有用であった。生体部分肝移植においてグラフトの肝動脈枝が複数存在する場合で最も太い肝動脈枝を再建した後に、吻合していないグラフトの肝動脈枝からの拍動性の噴出があり、カラードプラで再建していない領域の肝内肝動脈の血流が認められれば再建する肝動脈枝は一本で問題無いと考えられた。これまでの83例の生体肝移植で肝動脈閉塞は1例も経験しなかった。一方、ラットを用いた検討では、門脈を再建し再潅流後に肝動脈を再建再潅流したものは、肝動脈を再建しないものに比較して移植後の体重増加が良好で、血清ビリルビン値は有意に低く、血清ASTも低い傾向が得られ、肝動脈再建の重要性が示された。しかし、門脈および肝動脈の両者を再建後に、門脈を先に再潅流した後に肝動脈を再潅流したものと、肝動脈を先に再潅流した後に門脈を再潅流したものの検討では、両者共に再潅流までの時間が長くなるために、生存個体が少なくなり、十分な結論を出すに至らなかった。したがって、ラットにおいて門脈の再潅流と動脈の再潅流の順番を果たす役割は明らかでなく、グラフトへの影響はむしろ再潅流までの時間が大きいものと考えられた。これらの検討にはラットよりも長い時間の無肝期に耐える動物を用いることが必要である。
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