研究分担者 |
吉開 泰信 名古屋大学, 医学部, 教授 (90158402)
金井 道夫 名古屋大学, 医学部, 助手 (50242871)
宮地 正彦 愛知医科大学, 医学部, 講師 (80242874)
梛野 正人 名古屋大学, 医学部, 講師 (20237564)
二村 雄次 名古屋大学, 医学部, 教授 (80126888)
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研究概要 |
インターロイキン(IL)-10はマクロファージの機能,主要組織適合抗原(MHC)classIIの発現,酸化窒素の産生を調節することにより,炎症を制御するサイトカインで,肝障害における生体防御機構においても重要である. サルモネラ菌感染マウスモデルに対して,抗IL-10モノクローナル抗体投与によるIL-10中和実験を行い,その機能につき検討した.IL-10の中和により感染早期のマクロファージから,IL-1α,IL-12,腫瘍懐死因子(TNF)-α産生が増加し,感染に対し強い抵抗性を示した.しかし,感染中期には,マクロファージ活性化因子であるINF-γが著明に増加し,TNF-αによる肝細胞のアポトーシスは増加したがTNF-αによるアポトーシスを抑制する物質とされる熱ショックタンパク質(Hsp)-70は増加しなかった.すなわち,IL-10の中和により,感染抵抗性は増強したが,高度の肝障害を惹起した. 一方,TNF-a/D-ガラクトサミン投与による肝障害モデルを用いて,Hsp70と肝障害に関して検討した.同モデルにHsp70の発現を増加させるDibutyrylサイクリックAMP(DBcAMP)を投与すると,Hsp70発現は著明に増加し,それに伴い肝障害が減少した. 以上のように,IL-10の減少によりTNF-α,IL-12が増加し,感染抵抗性は高まるが,肝障害は悪化する.一方,DBcAMPの投与によりHsp70発現が増加し肝障害は抑制される.細菌感染に起因する肝不全を予防するためには,細菌感染の治療とともに,IL-10やHsp-70を増加させる手段を講じることが有効である可能性が示唆された.
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