研究概要 |
ネコの主膵管と総胆管を側々吻合して胆管拡張のない合流異常を作製し(吻合群),胆管剥離のみを行った群を対照として、膵液の胆管内逆流が胆管に及ぼす影響について検討した。術後6カ月以上経過した吻合群9頭,対照群6例について,ホルマリン固定後,総胆管を切り出しパラフィン切片とし,HE染色およびPCNA(PC10,DAKO)免疫組織染色を行った。 その結果、両群の総胆管径には有意差はなかったが、吻合群では対照群に比し,胆管上皮は腔外へ切れ込み陥入し,Beale嚢が増加する像がみられた。吻合群4例では著明に発達する胆管腺がみられた。上皮全体でのPCNA標識率は吻合群で27.2±10.9%,対照群で8.3±4.2%で,吻合群が有意に高かった(p<0.01)。吻合群のPCNA陽性細胞の局在は胆管上皮の陥入部から胆管腺につながる導管部で最も濃染され,胆管腺も比較的濃染された。 胆管拡張を伴わない膵胆管合流異常における胆嚢上皮の変化としては、細胞回転の亢進が生じ、その結果、粘膜ヒダが増高して過形成を呈することが確認されている。そして、この細胞回転の亢進が、膵胆管合流異常における高頻度の胆嚢における癌化の背景と考えられている。今回の検討により、総胆管上皮においても、胆嚢と同様な細胞回転の亢進がみられた。胆嚢上皮とは異なり,細胞回転の亢進により総胆管上皮では、総胆管外へ向かい上皮が管入し胆管腺が増加していた。細胞動態の亢進は将来の発癌のベースになると考えられる。
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