上皮性悪性腫瘍の浸潤、転移に重要な役割をはたしているとされるE-カドヘリンの予後規定因子としての意義を大腸癌100を用いて検討した.癌組織におけるE-カドヘリンの発現を免疫組織染色を行い、組織型、壁深達度、リンパ節転移などの臨床病理学的因子との関連、さらには予後との関連について考察した.その結果、E-カドヘリン発現型は43例でpreserved type、32例でheterogenous type、25例でlost typeであった.臨床病理学的因子のうちE-カドヘリンと相関を認めたのは、臨床病期、壁深達度、組織型、リンパ節転移、肝転移、静脈およびリンパ管侵襲であった.E-カドヘリン発現と再発には有意な相関を認め、heterogenous typeおよびlost typeで再発例が多かった.生存率との関連をみると、全症例において、また治癒切除例に限っても、heterogenous typeおよびlost typeの患者ではpreserved typeの患者に比して術後累積生存率は有意に不良であった.生存を目的変数とし、E-カドヘリン発現型を含む臨床病理学的因子を独立変数とした多変量解析の結果、全症例100例では、E-カドヘリンは臨床病期、静脈およびリンパ管侵襲とともに独立した予後規定因子であり、治癒切除例73例ではE-カドヘリンのもが唯一の独立した予後規定因子であった.以上の検討より、大腸癌の予後規定因子としてE-カドヘリン発現型は独立した予後規定因子であり、heterogenous typeおよびlost typeのE-カドへリン発現、すなわちE-カドヘリン発現減弱は患者の予後を不良とすることが明らかにされた.
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